ミステリ作家のなかで一番好きなのが、ルース・レンデルなのですが、今年の5月に亡くなったそうなので、お気に入りの作品を紹介させてください。
イギリスの女流ミステリ作家ということで、アガサ・クリスティと並び称されることが多かったようですが、作風はだいぶ違います。家族や狭い社会の中で登場人物の心理の奥が描かれるといったものが多く、ヒーローがでてくるわけでもなくカタルシスもないので好き嫌いは分かれると思いますが・・・。
ロウフィールド館の惨劇
どういう事件が起こって、犯人が誰かということは冒頭で語られています。謎解きではなくそこに至るまでの経緯が綿々とつづられます。うまく言えませんが、ホラーとは違う怖さがある救いようのないドラマです。
引き攣る肉
ヴィクターという若者が女性宅にたてこもり、説得に来た刑事を撃ってしまいます。刑事は半身不随となりますが、恋人と穏やかに暮らしていたところ出所したヴィクターが謝罪に訪れ、奇妙な人間関係が生まれていきます。ロウフィールド館の惨劇もそうですが、レンデルのすごいところはおかしくなっちゃってる人にも不条理な論理があることを悟らせてくれることです。なぜ刑事を撃ってしまったかについては、ちょっとしたオチがあります。
死との抱擁
この作品はレンデルの別名義バーバラ・ヴァインとして発表されています。ヴァイン名義の作品は、より文芸色が強いということです。
主人公の叔母が、仲が良かったはずの自分の妹を殺してしまいます。この件を本にしたいという作家が現れ、主人公は叔母たちについて子供のころからの出来事を顧みるといったような内容です。
登場人物のクセが強いうえ、いろいろな面をもっており、話が進むにつれ、感じわるい叔母さんが、だんだん哀れに思えてきたりします。
長いので一気読みは難しいです。
ウェクスフォードシリーズ
ここに挙げた作品はノンシリーズものですが、シリーズものもあります。ウェクスフォード首席警部はメタボに悩む田舎刑事ですが文学に造詣が深い魅力的なおじさまです。こちらは推理小説的要素があり、それほど陰陰滅滅とはしていません。
ウェクスフォードは醜男であるが女優である美人の娘とよく似ているというくだりがありますが、なんとなくジョン・ヴォイトとアンジェリーナ・ジョリー父娘に通じるような気がします。ジョン・ヴォイトの若いころの映画みるとなんとなく娘と似ているんですよね。ちなみにウェクスフォード父娘は仲良しです。
レンデルの作品は、未訳のものも含め、まだ読んでないのがあるはずなのでこれから探してみたいと思います。